人はミスをする。

それが何に起因するのかは様々で、時としてプラスに作用し、思いもしなかった結末に繋がる事もある。
一定のインプットから多様なアウトプットがなされる。
それはある意味で最も生き物らしい特性を端的に表しているのかも知れない。
今回はそんな(ノ∀`) ヤッチャッタナーってなお話。

通りますか?

それはまだ《ハルマゲドン/Armageddon(5ED)》がスタンダードイリーガルだった時のことだ。
当時を思い出すと《トレイリアのアカデミー/Tolarian Academy(USG)》《記憶の壺/Memory Jar(ULG)》からなるコンボの冬とそれを刈り取る大粛清が吹き荒れた後で、コンボにビート、コントロール、パーミッションと多様なデッキが存在し、それなりにバランスが取れた環境だったように思う。
けれどもWotCは《時のらせん/Time Spiral(USG)》から何も学ばなかったように《パリンクロン/Palinchron(ULG)》《大あわての捜索/Frantic Search(ULG)》そして《不実/Treachery(UDS)》と、何かにとりつかれた様にフリー・スペルを印刷し続けていた。
まぁここら辺はUSGが世間の目に触れた時には既にUDSの開発は終了していたんだろうから、ある程度は仕方のない事ではある。
このような「車は急に止まれない」を地で行く体制でありながら多様性を確保していくのは想像以上にタイトな綱渡りなんだと思う。
ゲームが退屈にならないようにエキサイティングなものを作らなくてはいけないが、一方でエキサイトしすぎてもいけない。ある意味で臨界を維持するような、そんな作業。
その当時リリースされたばかりのUDS(ウルザズディスティニー。今だったら、ウルザの運命と訳されていたんだろうか?やはりギルド門侵犯もこんな尻が気になるような名前じゃなくて、ほとんどのセットがそうであるようにゲートクラッシュと訳せば良かったんだ。一体どこで間違えたんだ?)もそんな輝くようなセットだったんだが、この話の主役ではない。
主役は《ハルマゲドン/Armageddon(5ED)》だ。

それは《ハルマゲドン/Armageddon(5ED)》入りの白単ビートダウンと《魔力の乱れ/Force Spike(5ED)》まで搭載された青単パーミッションの試合で起こった。
序盤から白単ビートダウンが展開しようとするのを青単パーミッションがカウンターで阻害していく展開だった。
青単パーミッションとしては、パーマネント除去のための《ネビニラルの円盤/Nevinyrral’s Disk(5ED)》を設置すると《ハルマゲドン/Armageddon(5ED)》で序盤に戻されてしまうため安全に《ネビニラルの円盤/Nevinyrral’s Disk(5ED)》が設置できるようになるまでダメージソースを許すわけにはいかない。
逆に白単ビートダウンとしては、なんとかそれを許してもらわないと勝つ事は出来ないし、相手にカウンターを使わせないとその間にドロースペルをプレイされてしまうわけで、こちらも手を休めるわけにはいかないのだ。
この様にひたすら1対1交換を繰り返す場合には、単純に枚数の勝負になる。
この時に勝利したのは白単側だった。プレイし続けた最後の呪文《ハルマゲドン/Armageddon(5ED)》が妨害の壁を乗り越えて解決されたのである。

―通します。

通します。どこから来た言葉だろう。麻雀だろうか。
ソリティアやワンチャンスなどMTGには他から借りてきた言葉が色々ある。
カウンターしません、とかpermission itでも良かったんだろうがその時はそう言った。

青単プレイヤーは自分の土地を全て(つまりコントロールしているパーマネントを全部)墓地に置いて、ターンが返ってくるのを待った。
結局、ターンは返って来なかった。白単プレイヤーが手札と墓地を混ぜてシャッフルし、サイドボードを始めたからだ。
それを見て、青単プレイヤーもサイドボードを手に取った。両者共にサイドボードが終わって、次のゲームが始まり、そして紛糾した。
2人とも、前のゲームに勝ったのは自分だと主張したからだった・・・。

原因は単純だった。
白単プレイヤーが「通します」を「投了します」に聞き間違えたのが《もつれ/Tangle(INV)》の最初だった。

とうします
とうりょうします

なるほど。良く似ている。それが文字ではなく、声だとするならなおさらに。
青単プレイヤーが投了したと思った白単プレイヤーが盤面を片付けるのは自然な所作だが、それを見た青単プレイヤーは白単プレイヤーが敗北を認めてサイドボードをしているのを見たと思ってしまった。
一言も挟まずにゲームが打ち切られるのは気まずいが、接戦の末にややエキサイトしつつ次のゲームの準備をするのは良くある事・・・そう考えて青単プレイヤーがサイドボードに取り掛かったのもまた自然な動作の範疇であると言える。

まぁこのような事は傍観者だから言える事で、当事者にとってはこれでは済まない。
特に《ハルマゲドン/Armageddon(5ED)》によって大きな有利を得たはずの白単プレイヤーが「確かに俺は投了しますと聞いたんだ!」と抗議の声をあげるのも、これまた自然な行動の範疇なのだった。

最終的には喧嘩両成敗、引き分けと言う形での決着となったが、実際に青単プレイヤーがなんと言ったのかは永遠に残る謎で、性善説が好きな俺はきっと「通します」と言ったんだろうと思うのみである。
もし《ハルマゲドン/Armageddon(5ED)》の様なゲームを1枚で決定付けるスペルが印刷されていなければ、もし「通します」が輸入されていなければ、こんな事は起こらなかっただろう。もしくはどちらかが一言確認するだけでも良かった。
つまりありふれたコミュニケーションミスだと言っていい。

でも、1枚のスペルと1つの言葉がここまで自然に、そして完璧に試合を破壊するのを、俺は見た事がない。だからこのエピソードは今でも覚えているし、今でも思い出して誰かに話をしたくなる。
「次の試合にいきましょう!」一言添えるだけで、これは防ぐ事が出来る。
この件があったから言うわけではなくて、自分を鼓舞するために言うのだが、俺はこれを言うようにしている。
《ハルマゲドン/Armageddon(5ED)》は今はもうなくても類似の何かはあるかも知れない。

書きたい事は書けたのだけど、読み返すとすげー冗長になってしまった。
ここまで読んでくれてありがとう。あなたが必要なマナとスペルに恵まれますように。

コメント

MinionMastersマン
2013年2月9日0:38

なげえ
三文字で頼む

bun
2013年2月9日0:42

報連相

bun
2013年2月9日0:43

いや・・・

寄生獣

か!

nophoto
通りすがり
2013年2月9日2:15

や まなし
お ちなし
い みなし

prae
2013年2月9日2:34

この話を見ると《凍らし/Frostling(BOK)》事件を思い出しますね。
話の流れとはぜんぜん違うんですが・・・。

bun
2013年2月9日7:34





と書こうとした初期案と似ているな。
説明が必要なためと3行ではなくて3文字に気がついたために没になったが。

bun
2013年2月9日7:38

>《凍らし/Frostling(BOK)》
あれは相当にもにょる感じでしたよね・・・。
当時は納得行かなかったなぁ。
確かGP横浜でも試合後の巻き戻しがあって、そう言うものかと納得しましたが。
bun

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