残業で若干遅くなったので今日はシールドには不参加の予定。
このエントリが早く書きあがったらその時間を利用してシールドに参加するかも知れない。きっと無理だろうが。

先だって風の噂と言うかDN上で

「ドラフトで《悪鬼の血脈、ティボルト/Tibalt, the Fiend-Blooded(AVR)》は強いのだ。」

と言うエントリを読んだ。
俺がそのエントリを読んだ時の肉体的・精神的状態があまり良好ではなかったので記事の内容はうろ覚えだが《悪鬼の血脈、ティボルト/Tibalt, the Fiend-Blooded(AVR)》がドラフトにおいて使用に耐えると言う説は新鮮に感じたし、レポートを読むに十分に活躍したようである。

この時のレポートをまずは読み返してみたいのだが、上述のように状態が状態であったために、いつ、誰のエントリを読んだのかとんと思い出せずに現在に至る。
誰かご存知の方がいらっしゃったらご教示願いたい。

現状ではこのエントリを読み返すのが不可能であるため、取り合えずは《悪鬼の血脈、ティボルト/Tibalt, the Fiend-Blooded(AVR)》に関する諸々の先入観を取り払い、虚心坦懐に《悪鬼の血脈、ティボルト/Tibalt, the Fiend-Blooded(AVR)》のテキストを確認してみよう。

なぜこの様な前置きをするかと言うと、俺はスタンダードにおいては《悪鬼の血脈、ティボルト/Tibalt, the Fiend-Blooded(AVR)》入りの4colorReanimateをプレイした事があるため、ある程度の性能を知っている。

AVR後のスタンダードにおいて《忌むべき者のかがり火/Bonfire of the Damned(AVR)》でマナベースを壊滅させられる上に《士気溢れる徴集兵/Zealous Conscripts(AVR)》に対する解答も求められている4colorReanimateがどのようなポジションにあるのかはさておき、4colorReanimateにおける《悪鬼の血脈、ティボルト/Tibalt, the Fiend-Blooded(AVR)》は、ほとんど《ジェイス・ベレレン/Jace Beleren(LRW)》であり、十分に使用に耐えるものであると感じた。

しかしながら世間的には《悪鬼の血脈、ティボルト/Tibalt, the Fiend-Blooded(AVR)》は弱体であり、いかなるデッキにおいてもその居場所を確保出来ないカードであると評される事も少なくない。
なので、それらの評価を持って《悪鬼の血脈、ティボルト/Tibalt, the Fiend-Blooded(AVR)》を短絡的に採用されるに足るカードではないと結論付けるのを避けるため、また上述のエントリに影響されて《悪鬼の血脈、ティボルト/Tibalt, the Fiend-Blooded(AVR)》は使用に耐え得ると評価するのを避けるため、先入観を取り除く必要があるのだ。

前置きが長くなったが以下が《悪鬼の血脈、ティボルト/Tibalt, the Fiend-Blooded(AVR)》のテキストである。
悪鬼の血脈、ティボルト/Tibalt, the Fiend-Blooded
マナコスト (赤)(赤)
タイプ プレインズウォーカー — ティボルト(Tibalt)

[+1]:カードを1枚引き、その後カードを1枚無作為に選んで捨てる。

[-4]:プレイヤー1人を対象とする。悪鬼の血脈、ティボルトはそのプレイヤーに、そのプレイヤーの手札にあるカードの枚数に等しい点数のダメージを与える。

[-6]:ターン終了時まですべてのクリーチャーのコントロールを得る。それらをアンタップする。それらはターン終了時まで速攻を得る。

忠誠値2

初期忠誠値が2であるため、主に使う事になるのがもちろん+1能力になる。
そのため、まずは「カードを1枚引いて、1枚無作為に選んで捨てる。」とはどう言う事かを考える必要がある。

この種の手札の枚数は変わらないが、質を向上させる効果は、擬似的にハンドアドバンテージを生み出す。
M10環境において《マーフォークの物あさり/Merfolk Looter(M10)》が1-1でピックするに足るカードであったのは、環境が低速であり、起動型能力を何回も使用出来たがゆえである。
特にゲーム後半においては土地カードが不要になるため、ほとんど1ドローするに等しい効果を発揮した。

しかし、今回評価しなければならないのは、任意のカードを残す事が出来ない、「1枚を無作為に選んで捨てる」効果である。

・・・難しいな。
簡単な話をすると、任意のカードXをYターン中に引く可能性がZ%だった場合に《悪鬼の血脈、ティボルト/Tibalt, the Fiend-Blooded(AVR)》の能力を起動した方が入手率が高いのか、そうでないのかを割り出せば良い・・・と言う風にはならない。
なぜかと言うとカード評価の舞台がリミテッドだからであり、そこでは除去も生物も必要で、決定的なカードXをプレイすれば、すなわち勝ちとなるケースの方が少ないだろうと思われるからだ。

では、考え方を変えて、土地を全て不要なカードだと設定しよう。
この場合、リミテッドでは約4割が土地であるため、次のターンに有効なカードを引く可能性は6割。
《悪鬼の血脈、ティボルト/Tibalt, the Fiend-Blooded(AVR)》が機能する最低限の手札枚数が1枚であるので、手札を土地1枚だと仮定すると

4割=土地を引いてディスカード。
6割=有効なカードを引いて1/2で有効なカードをディスカード

となるので、我ながら乱暴な計算であるが、約7割は起動した方が得と言う事になる。
本当に大丈夫か、この計算。

そもそもこの計算には手札で保有しておきたい除去やコンバットトリックなどの有効なカードが含まれていないので、真に手札が無駄カードである場合の事だけを考えても仕方があるまい。
そもそもドローするカードも無作為なら、捨てるカードも無作為であるので、手札の質の向上につながるかは怪しいものだ。

まぁ手札に3枚程度の土地を抱えていて、スペルが1枚しかないのなら4割の確率で土地を引いてきても4/5は土地を捨てる事になるし、スペルを引いてきた場合にも3/5で土地を捨てる事になるので、まぁ有利な取引である事には変わりはないと思われる。
これは、あくまで仮定の話であるし《マーフォークの物あさり/Merfolk Looter(M10)》と違って有効牌を貯めつつ無駄カードだけを排除すると言う方法が取れない時点でかなり終わっているようにも思える。

そもそも起動回数が多い=有利につながるような構築はコントロール向きの構築であり、常に相手の脅威に対して解答を保有しておきたいのに「無作為に1枚を捨てる」性質上それが出来ないのであれば意味が無い。
デッキがビートであれば、そもそもこのカードの枠ってあるの?と言う疑問が生じてくるので+1能力については有効性を疑問視せざるを得ないと言う結論だ。

しかし、手札が充実しているのでない限り、新たなドローを無作為に捨てなくてはならないとしても6割が有効牌を引いてくると仮定すると、起動しても基本的には損な取引にはならないと言う点には留意が必要だろう。

次に-4能力であるが《突然の衝撃/Sudden Impact(10E)》は"突然"プレイされるから有効なのであって、見えている《突然の衝撃/Sudden Impact(10E)》はさほど脅威ではない。
よほど展開が遅くて手札が処理できないような場合においては、既に《悪鬼の血脈、ティボルト/Tibalt, the Fiend-Blooded(AVR)》に関係なく勝っているのではないか。
相手の手札を縛る意味では、2~3点のダメージでは理由として弱く、これまたあまり有用ではないと結論出来る。

では-6能力ではどうか。
これは恐らくプレイすれば勝つ能力である。
条件的にはRR-待機4の《暴動/Insurrection(ONS)》であり、これは非常に強力である。
しかし、対戦相手がコントロールする発生源からダメージを受けるたび、待機カウンターが乗るとなれば話は別だろう。
特にAVR環境においてはビートが隆盛であり、プレイした時の場にもよるのだろうが《悪鬼の血脈、ティボルト/Tibalt, the Fiend-Blooded(AVR)》を守りきるのは難しいのではないかと思える。
しかしRR-待機4の《暴動/Insurrection(ONS)》は魅力的でもある。

と言うわけでリミテッドにおける《悪鬼の血脈、ティボルト/Tibalt, the Fiend-Blooded(AVR)》は実は《暴動/Insurrection(ONS)》なのではないかと言うのが結論だ。

上述したように手札の内容にもよるが、基本的には+1能力を起動したとしても有効に働く方が確率としては高いのであり、条件を達成しさえすれば勝利するとあれば魅力的にも見えてくる。
盤面で押されていると言うのならともかく、同等もしくはそれ以上なら守る事も出来るのではないか。
相手が《悪鬼の血脈、ティボルト/Tibalt, the Fiend-Blooded(AVR)》を除去するために不利なアタックをしなければならなくなったと言うのであれば、それはそれでこちらを有利にする。

とは言えRR-待機2で相手がスペルをプレイすると時間カウンターが乗る《パーディック山のドラゴン/Pardic Dragon(TSP)》はマジで待機すると永遠にプレイ出来なかったんだよな・・・。

ともあれ、これで《悪鬼の血脈、ティボルト/Tibalt, the Fiend-Blooded(AVR)》のライバルが実は《狂気の預言者/Mad Prophet(AVR)》ではなくて《暴動/Insurrection(ONS)》であった事は新たな視点であると言って良いのではないか。

しかし、このままでは何となく《悪鬼の血脈、ティボルト/Tibalt, the Fiend-Blooded(AVR)》が《暴動/Insurrection(ONS)》に見えてきて強そうに思えてしまうので、実際にはどうなのか動きを確かめて見たくなるのが人情と言うものである。
さりとて《悪鬼の血脈、ティボルト/Tibalt, the Fiend-Blooded(AVR)》は神話レア・・・試したいからと言ってそうそう上手くいくわけではない。

だが、方法はある。
それはリアルで通常のドラフトを行い、もし赤いデッキをピック出来たのならば、試合後にデッキの中のカード1枚と《悪鬼の血脈、ティボルト/Tibalt, the Fiend-Blooded(AVR)》を変更した状態で、かつ最初から《悪鬼の血脈、ティボルト/Tibalt, the Fiend-Blooded(AVR)》を手札に持った状態でゲームをプレイしてもらえば良いのである。

これは構築のサイドボードを試す際に本当にそのサイドボードカードが有効なのかを確かめるために行う練習の流用で、これによってリミテッドで効果が評価しにくいカードも実際にプレイする事によって評価を確かめる事が出来るのだ。

と言うわけで、機会があれば試してみる事とする。
もしそれが出来たなら、また報告のエントリを書く予定だ。

だから、暫定的な結論は《悪鬼の血脈、ティボルト/Tibalt, the Fiend-Blooded(AVR)》はRR-待機4の《暴動/Insurrection(ONS)であるとしておこう。

願わくは《パーディック山のドラゴン/Pardic Dragon(TSP)》でない事を祈りつつ。

コメント

タカハシケイ
2012年5月30日6:14

なるほど、なかなか面白いですね。
RR待機4の暴動でおまけに無作為ルータがつくなら悪いカードじゃなさそう。
個人的には燃え立つ復讐デッキに入れて使ってますがやはり強いですw

bun
2012年5月30日6:39

おはようございます。

>《燃え立つ復讐/Burning Vengeance(ISD)》
このデッキでも《悪鬼の血脈、ティボルト/Tibalt, the Fiend-Blooded(AVR)》は、ほとんど《ジェイス・ベレレン/Jace Beleren(LRW)》ですよね。
《燃え立つ復讐/Burning Vengeance(ISD)》の誘発のためにマナも使うし、ライブラリを掘り進めるのにマナを必要としない《悪鬼の血脈、ティボルト/Tibalt, the Fiend-Blooded(AVR)》は良い仕事をしそうです。

>RR-待機4の《暴動/Insurrection(ONS)
相手に殴られたりすると、時間カウンターが増えたり、そのまま墓地に落ちたりするので試してみないと上手く機能するかは分からないのですが、少なくとも試してみたいなとは思わされました。
実際には《パーディック山のドラゴン/Pardic Dragon(TSP)》なんですかねぇ・・・。

pinchi
2012年5月30日12:08

>4割=土地を引いてディスカード。
>6割=有効なカードを引いて1/2で有効なカードをディスカード
有効なカードを引いてそれをディスカードしてしまった場合の評価ですが、私にはそれが損であるとは思えません。デモコン理論と同じですが、その有効なカードは最初からライブラリの底に眠っていたと考えれば、単に暴動に一歩近づいたものとして評価できるのではないでしょうか。ライブラリの底という非公開情報を1枚分知ることができたので、得したとさえ言えます(感情的に辛いものはありますが)。なので、手札に不要なカードしかない状態での+1起動は、勝率100%の賭けであると思います。

手札に有効なカードがある場合は途端に勝率が落ちてくるので、状況に応じて+1を起動するかしないかを決めるべきだと思います。「+1を起動しない」という選択肢がどの程度弱いのか、ですが、遊んでいるアーティファクト(タイミング的に装備できない装備品や天使にならない墳墓など)や遊んでいるエンチャント(働かない獰猛シリーズ)と同等の弱さであると考えていいのではないでしょうか。確かに弱いことは弱いのですが、アーティファクトやエンチャントに比べると世間の評価は厳しすぎかな、とは思います。ただ、自ら分の悪い賭けに挑むのは論外ですし、それに負けたからといってティボルトを非難するのは違うと思います。

リミテでは「暴動を起こせば勝ち」という状況は多々あるので、ティボルトの忠誠度は毒カウンターにも似ていると思います。この毒カウンターは減ることもありますが、その時は代わりに何らかの仕事(ライフゲインや相手クリーチャーのタップ)をしたので無駄ではないでしょう。アヴァシンの巻物(デッキの潤滑油+ライフゲイン)や厳格な導師(4~5ターン放置でゲームオーバー)に近い存在にも思えます。

>デッキがビートであれば、そもそもこのカードの枠ってあるの?
どう転んでも遅いカードであることには変わりないので、ビートに入れるべきカードではないと思います。2マナクリーチャー、除去、コンバットトリック、などよりも優先して入れるカードではなさそうです。

bun
2012年5月30日19:11

手札が土地しかなくて、かつ土地が不要な場合、特殊な場合を除いて、プレイとしては確かにほぼ確実に能力を起動するので、仰るとおりだと思います。
特殊な場合と言うのは、ライブラリのトップが《轟く怒り/Thunderous Wrath(AVR)》だと分かっていて、かつ相手のライフが5点である場合とかですね。

まさにこの「無作為に手札を1枚選んで捨てる。」と言うのが、ほとんどの場合「どの程度のリスクを払っているのか、そもそもどのリソースを消費して、何を得ているのか分からない」ので評価を難しくしています。
エントリ中の例から分かるように、一般的なリミテッドの構成比率から考えるに割合に有利な取引をしているはずなのですが、実際にはどの程度有利で、結果的になにが起こるかは分からない場合は、最悪を想定して動かなくてはならないと言うMTGのセオリーによって《悪鬼の血脈、ティボルト/Tibalt, the Fiend-Blooded(AVR)》の+1能力が割り引いて評価されているのだと言うきらいはありますね。

簡単に言うと、みんな訳がわからなくて、何となく悪い事の書いてあるカードは最悪を想定すると使いたくない、とこうなるのだと思います。

さらにカードタイプがPWと言う事もあり、相手からのダメージでも破壊されてしまうため、対処が容易であると言う印象があり、実際は何らかの手段で破壊されたとしても3点かそれ以上のライフを得ているのであり、《大聖堂の聖別者/Cathedral Sanctifier(AVR)》くらいの働きをしているのですが、やはりMTGにおけるリソースカーストの最底辺に位置する「ライフ」との交換がされてしまうと言うのが、さらに《悪鬼の血脈、ティボルト/Tibalt, the Fiend-Blooded(AVR)》の使用頻度を下げているのでは無いかと思います。

>ビート
確かにそうですね。
いくら相手が対応しないとダメージを受けるかもと言っても、任意に生物をタップ出来るわけでもないのでこれは納得です。
bun

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