仕事が忙しくなる兆しあり!
兆しがあると言うか納期が短くなってしまい、その分忙しくなるのは確実なのだ。
折角の祭り期間中だと言うのに、満足にドラフトも出来ない状態だ。
と言う事で、がっかりしつつお酒を飲んでいる。

アルコールが入っている状態と言う事もあって、割と深く考えずに書いてしまっている。
もしかすると人によっては不快に思われるかも知れないので、お目を通される際にはご注意を。
以下は僕の馬鹿げた性質について触れたもので、悪意などは無いと言っておく。




「イケメン」と言う言葉をご存知だろうか。

いつの頃からか耳にするようになり、一時的な流行語に終わるかと思いきや、そのまま使われ続けて、市民権を得た感のある言葉である。
どうやらギャル語に端を発したスラングであり、芸人、狩野英孝の口癖でもある。
現在では幅広い意味で使われるが、一般には容姿端麗な風貌の男性を評してイケメンと呼ばれる。

実は、僕はこのイケメンと言う表現に、若干のわだかまりと言うか、相手を評して使用する際の、苦手意識のようなものがあるのだ。
苦手意識と言うよりも、罪悪感に近いだろうか。

一般的に言えばその様に評するのは素直に賛辞の言葉であり、その言葉には影を背負う部分はない。大抵の場合は、人への紹介のされ方としてはプラスに働くはずである。
では、なぜわだかまりや、まして罪悪感などを感じるのか。

それは元を質せば、MTGプレイヤー特有の状況(環境と言えば良いのか)に起因する物なのかも知れない。

思えばMTGプレイヤーと言うのは、各地の大会への遠征などを経て、徐々に交友関係が広がっていくため、顔と名前が一致しないと言う事は良くある。
そのため、周囲への説明として、「どこそこのイケメンプレイヤー」と言う表現がなされる。
このような表現は一般で使用される際のニュアンスと同一である。
だが、言葉と言うのはコミュニケーションの道具なのであり、地域性を反映する。
そのため特定のコミュニティ内においては、一般的な表現とは異なる、いわば限定的な「方言」が生成されるのだ。

例えば「プレイがイケメン」(意表を付くグッドプレイや、非常にリスキーな、いわゆる「男気のある」プレイの事)
「カットがイケメン」(相手のマリガントラブルを誘発する、デスカットの事)
「トップがイケメン」(そのままトップデッキの事)

等々である。
最初の例である「プレイがイケメン」に関しては素直に賛辞の意が込められているが、第二/第三の例ともなると趣が異なる。
そこには、ポジティブな意味は余りこめられておらず、単に揶揄としての側面が強い。

上記に見られる様に、否定的な、ネガティブな意味で使われる場合があるため、わだかまっているのか。
まぁ若干はその側面もあるだろう。
しかし、そんなものは些細な事である。
本来の使い方を守ってすら「良く見ればイケメン」や「イケメン風」「ややイケメン」など取り方によっては喧嘩を売っているのかと言う表現は可能だからである。
そんな事で苦手意識が芽生えるほど僕は繊細には出来ていない。
コミュニティ内でも、時折「動作がイケメン」等と言う表現がなされる事もあり、既に誉めているのかそうでないのか判らない場合はある。

だから、僕の罪悪感の根源は、まだこの先にあるのだ。

先に挙げた例の他にも、MTGプレイヤー特有の表現にはカードへの評価としてイケメンと言う言葉が用いられる事がある。
リミテッド、構築によらず、強力なカードや、場面場面で有効なカードを評する場合だ。
例えば構築におけるジャンド相手への2t目の《広がりゆく海/Spreading Seas(ZEN)》
赤単相手への2t目の《コーの火歩き/Kor Firewalker(WWK)》
ジャンド同型での消耗戦後トップから降ってきた《若き群れのドラゴン/Broodmate Dragon(ALA)》
リミテッドでの5t目の《ウラモグの破壊者/Ulamog’s Crusher(ROE)》
《蛇の陰影/Snake Umbra(ROE)》がついた《オーラのナーリッド/Aura Gnarlid(ROE)》

いずれもその評価に相応しい猛者たちである。

が、言葉と言うのは便利なもので「良く見たら」とか「場合によっては」がついてしまうと、大抵適用可能な範囲に入ってしまう。

例えば《ジュワー島の小走り/Jwari Scuttler(ROE)》に対する評価がそれで、仮に相手が赤黒のビート系なら、その構成生物のほとんどを止めるか、相打ちに持ち込める実力を持っている。
この事をもって《ジュワー島の小走り/Jwari Scuttler(ROE)》を、その名前の圧倒的チープさを持ってしてもイケメンと評し得るのだ。

覚えておいて欲しい。
例え3マナ2/3バニラと言うスペックでも、スポットライトの当て方によっては、光り、そして輝くのである。

その日。
僕は友人と大会に参加した帰り道だった。
環境は既にアラーラブロックだったのが、ローウィン/モーニングタイド期の事を、懐かしさと共に思い出し、部族シナジーがどうの、タッチのしやすさがどうのと言う話をしていたのだと思う。
その時ふとした事から《目覚ましヒバリ/Reveillark(MOR)》の話題になり、やがてエレメンタル全般の話へと進展していく。
あの頃のエレメンタルと言う種族は、赤と言う色の安さもあって、きちんと組み切れれば《煙束ね/Smokebraider(LRW)》の存在もあり、柔軟性と速度を兼ね備えた強力なデッキへと組みあがる事もあった。

様々なエレメンタル達が環境に存在した。
《熟考漂い/Mulldrifter(LRW)》
《霊気撃ち/Aethersnipe(LRW)》
《薄れ馬/Wispmare(LRW)》
《茨角/Briarhorn(LRW)》
《輝き帯び/Glarewielder(LRW)》
《草原恵み/Meadowboon(MOR)》
《嘆きウェルク/Mournwhelk(LRW)》
《無し生み/Nevermaker(MOR)》
《恨み唸り/Spitebellows(MOR)》
《叫び大口/Shriekmaw(LRW)》
《雲打ち/Cloudthresher(LRW)》
そして《目覚ましヒバリ/Reveillark(MOR)》

それ以外にもまだ多くいるが、これら想起能力を持つエレメンタル達は、皆強いのでは無いか。
《断層削り/Faultgrinder(LRW)》ですら《煙束ね/Smokebraider(LRW)》と共に居場所を見つけていた。

こいつらみんなイケメンだよな。

友人はそう言った。
そしてひとつ、ひとつ、名前と長所を挙げていく。
《内炎の見習い/Inner-Flame Acolyte(LRW)》→4/2速攻
《木立を歩むもの/Walker of the Grove(MOR)》→器用なファッティ
《夜明けヒラメ/Dawnfluke(LRW)》→対赤のサイド
《這い耽り/Slithermuse(MOR)》→アドバンテージ

そして・・・《屑嗅ぎ鼻/Offalsnout(MOR)》

おい。待て。何を言い出すのか。

個人的に《屑嗅ぎ鼻/Offalsnout(MOR)》はMTGやっちまったイラスト部門第2位ある。
第1位は言わずと知れた《アメーバの変わり身/Amoeboid Changeling(LRW)》であり、何度と無く仕事中にあの無気力な目を思い出し、職場で突然の思い出し笑いが漏れ出さない様にするのに必死だった。
ローウィンブロックのドラフトでは、ある友人がやたらとピックに時間をかけているなと思っていたら《アメーバの変わり身/Amoeboid Changeling(LRW)》の目に囚われて、視線を外せなかったと語った逸話は思い出深い。
そんな偉大な先輩の後続として《屑嗅ぎ鼻/Offalsnout(MOR)》はやってきた。
ブタの顔に芋虫の体を持ち、恐らくは可愛らしさをアピールするために触覚を生やしている。
まさしく冒涜の化身。可愛らしさすら、その身に纏おうと試みる事で、穢しているのである。

《アメーバの変わり身/Amoeboid Changeling(LRW)》が、アンチェインことビスケット・オリバだとすると、《屑嗅ぎ鼻/Offalsnout(MOR)》はジュン・ゲバルの名に相応しい。まさしくMrセカンである。

激しい抵抗を示す僕に、友人は含めるようにこう言った。

良いか。こいつは3マナ2/2の瞬速持ちで、その他にメリットまで持ってるんだ。

だから。

「場合によっては。」

飛び出してくる魔法の言葉。

十分イケメンじゃないか。

あー。言ってしまった。
しかも十分イケメンって。意味が判って言っているのか。

確かに《屑嗅ぎ鼻/Offalsnout(MOR)》のスペックは並みなのである。
だが、相互のシナジーが重視されたローウィンブロックにあっては、弱い穴埋めにしか使う事ができず、ほとんど使い物にはならなかった。
それでも時にかなり弱めのデッキに入って、その瞬速が故に役に立つ事もあったのだ。
だからそう言えない事はない。

なおも僕は抵抗を続ける。

いや。さすがにイケメンじゃないだろ。だってアレだよ?

事ここに至っては僕ら2人の間で、イケメンの意味が違い過ぎて言葉がすれ違っている。

それじゃあ、だって。

僕が言う。
遂に出てくるMTG界最強最悪のあの名前が。あのアンチェイン。

言うな。言うんじゃない・・・。

《アメーバの変わり身/Amoeboid Changeling(LRW)》だってそうじゃないか。

そうだな。

僕の心の内を知ってか知らずにか、あっさり友人は肯定した。
友人が問うているのはスペックで、その意味では《アメーバの変わり身/Amoeboid Changeling(LRW)》は役に立つ。

まさしく「場合によっては」そうとも呼べる存在なのだ。

あの多相と言う新しい概念と共に、MTGの新しいアートの世界を拓いたあの生物は。
あの悪魔であり、天使であり、同時にドラゴンであり、巨像であるあの生物は、ついでにイケメンでもあったのだ。

それ以来。

僕の中では人を評してイケメンと呼ぶのには、罪悪感が伴う様になった。
決してそんな意図があるのではないにしろ、あのふたつと人間を同列に並べる事はあり得ない・・・。

イケメンと言う言葉にこのようなマイナスベクトルのイメージを持っているのは僕だけだとは思うのだが、このような理由で、僕は人をイケメンと呼ぶ事を避ける。

以上が僕の小さな《心の傷跡/Traumatize(M10)》の物語。

言葉と言うのは周囲の環境や、聞き手や話者が持つバックグラウンドによって、大きく意味が変化する。
願わくば、貴方の放ったその言葉が、貴方の意図した通りに、相手に伝わりますように。

コメント

ろせ
2010年5月18日0:15

>恐らくは可愛らしさをアピールするために触覚を生やしている。
でフイタwww

自分がドラフトで全てのクリーチャーを使うのは、こういう、一時的なイケメンな時を見せてあげたいかもしれない。雄々しい守備兵はプロテクション生物を止めるイケメン(笑)

ラッチ
2010年5月18日0:29

セカンまできてついに笑ってしまいました。
たまのこういう話も好きですよ。

bun
2010年5月18日12:59

>ろせさん

>《雄々しい守備兵/Valiant Guard(CON)》
確かにw
そのスペックから相手に慢心を抱かせ、殴るべきでないところで殴らせるプロでもありますねw

真面目な話をすると、適材適所とは本当にその通りで、テキストを読むだけでそのまま可能性を追求しないと言うのは愚作ですね。

>ラッチさん
そう言ってもらえると、昨日の自分の行いが赦された気がしてホッとします。
個人の日記と言う特殊な形式ですが、その内容を評価するのは読み手です。
でも、僕が想定する読み手は僕自身しかいない訳で、誰かが不快に思わないかと言うのが心配なんです。

例えば今回のエントリを《アメーバの変わり身/Amoeboid Changeling(LRW)》《屑嗅ぎ鼻/Offalsnout(MOR)》好きに読まれたら刺されるんじゃないかとかw
bun

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