週末になればドラフトする時間が取れるだろうと考えていたものの、用事が入ってしまったり、用事が終わって戻ったら、いつの間にかログインされていたりで結局出来ず。

合間合間にM10ドラフト用のpackを調達しようとMOMIR Basicをやっていた。
これなら最低限Pickをしながら用事をこなすと言う事をしなくても済む。
最近は何とか勝てる様になってきて、構築のレーティングも1600を回復した。
ただ、やはり神様は居なかったらしく、予定の4tixではpackを調達できず、泣く泣くレアを売った。

何試合かするうちにMOMIR Basicはそのルールの特殊性から、各種のリソースの差がゲームに及ぼす影響を把握しやすいのではないかと思った。

「構築段階で、あのカードを入れておけば・・・」
「あそこでマリガンしていれば・・・」
「あのカードをケアしていれば・・・」

と言う反省の弁は試合後につき物だが、実際にその反省が正しいものであるかを判断するのは困難だ。
通常のMTGでは、デッキ構築に始まり、実際のプレイを経て決着がつくまで、多様な要素が複雑に影響しあってゲームの勝敗が決まるため、どの部分がそのゲームの勝因、または敗因なのかを解明するには、考慮に入れなければいけない要素の組み合わせが多すぎるからだ。

しかしMOMIR Basicでは、ゲームに影響する要素が限定されたり、取り除かれたりしているため、比較的勝因や敗因の追求が行いやすい。

例えばMOMIR Basicにおいてはデッキの構成要素は基本地形のみだ。
確かにプレイヤーによって個性が出る部分だが、構築戦ほどの多様性があるとは言えないだろう。

次に、通常マリガンを考慮する事はない。
どちらのプレイヤーもクリックミスなどの特例を除いて7枚の手札でゲームを開始するだろう。ハンド枚数は先攻/後攻によって決まる。

それからMOMIR Basicではアバターの能力を起動するのは、ソーサリータイミングで各ターンに1回のみ。
出てくる生物のコストは起動時に払われたマナと等しいと言うルールがあるので、相手より早く、より多くのマナを使うと言う恩恵を、はっきりと感じる事が出来る。

これは手札にも同じ事が言え、MOMIR Basicにおいて手札の枚数は、ほとんどそのまま使用可能なマナの数を規定する。
なのでMOMIR Basicでは「カードアドバンテージ」と「ハンドアドバンテージ」が明確に区別される。
常にドローは基本地形になるので、ほとんどの場合においては「カードクオリティー」が意識される事は無い。
デッキ構築にもよるが、基本地形はデッキ含有率をほぼ忠実に再現するため、最終的に必要な色マナを見ながら土地をセットしていく事になる。
初期手札や用意されたプールを考慮すると最終的な攻防戦は8マナ域を中心に行う事になる。
この事から「手札が増える効果」と「手札が減る効果」には明確な差が生まれる。
「手札が増える効果」は選択可能なマナ域を規定し、「手札が減る効果」は到達可能なマナ域とアバターの使用回数を規定する。
MOMIR Basicでは総じて「手札が減る効果」が強力になる。
他にも制約や変更はあるだろうが以上がMOMIR Basicの環境である。

この様なレギュレーションを経験し、改めてスコット・ジョーンズの
「僕が見る構造―テンポへのガイド」を思い出した。

かつて僕が自身のコントロール脳を自覚し、ビートダウンの道を模索していた時DPSさんが参考にと教えてくれたものだ。
(内容は以下URL)
http://mtg.takaratomy.co.jp/others/column/kamio/20060608/index.html

この中では主にDraftにおいて頻発する状況を説明するために「ビート」と言う概念を導入して「テンポ」を説明している。
僕はこの「ビート」と言う概念が「主観によって判断される」と言うところがどうにも納得できなかったのだが相手がモミった時の《力の化身/Avatar of Might(10E)》と自分の《空護りの掃討者/Hoverguard Sweepers(5DN)》のインパクトの違いによって完全に理解した。

なるほど。「良いビート」と「悪いビート」は存在し得る。

MOMIR Basicの規定の1つである「アバター能力は1tに1回のみプレイできる」は、そのまま「ビート」のアップダウンを示すし、それを体験させてくれる。
後手で《空に届くマンタ/Skyreach Manta(5DN)》を引いた時のピンチ具合は半端じゃない。

MOMIR Basicで理解が深まるのは「ビート」に関してだけではない。
文中で使われる「見せ掛けのテンポ」も戦闘に介在するのが能力だけと言う事もあり、実感しやすい。
「ブロッククリーチャーを除去するのと攻撃クリーチャーを増やすのは違う。 」や「イニシアティブ
」の考え方も先手/後手の関係を考慮し、ゲームプランニングを考慮する時意味を増す。

スコット・ジョーンズ版の「テンポ」だけが、一般に使われる意味での「テンポ」では無いと思うがMOMIR Basicを経験する事で理解が深まった。
しかし同時に疑問も湧いてくる。

一般の意味においては《不毛の大地/Wasteland(TMP)》で有利な状況を固定する事も、相手の行動を捌いた余剰マナで《渦まく知識/Brainstorm(5ED)》をプレイする事も同様に「テンポアドバンテージを獲得した」と表現され得る。
MOMIR Basicで経験したような「ビート」主観で判断すると上記例はテンポを得る行為ではない。
実際にMOMIR Basicにおいて《鼠の短牙/Nezumi Shortfang(CHK)》や《ディミーアのギルド魔道士/Dimir Guildmage(RAV)》の能力起動で得ているのはカードアドバンテージであり、間接的に勝利に貢献する事はあっても、別途マナを使用した事で「ビート」の質は格段に低下する。
つまりスコット・ジョーンズ流に解釈する限り《渦まく知識/Brainstorm(ICE)》でテンポアドバンテージを獲得する事は無い。

スコット・ジョーンズ版の「テンポ」は「ビート」によって説明されるが、《不毛の大地/Wasteland(TMP)》の効用や余剰マナの活用はどの様に説明されるのだろうか。

MOMIR Basicとは違った形でMTGのルールの一部を変更、または限定すると見えて来るのかもしれない。


コメント

ななし
2010年1月24日23:37

>《不毛の大地/Wasteland(TMP)》
バウンス同様にテンポの維持をしているだけであって、テンポアドバンテージを獲得はしていないんではないでしょうか?

>《渦まく知識/Brainstorm(ICE)》
いろいろおかしいと思いますが、コンボデッキの対決で(相手への妨害行為も含め)平均10回スペルを唱えるとゲームに勝つことが出来るなら、「ビート」の単位を「スペルのプレイ回数」に置き換え相手よりも先行することでテンポアドバンテージを獲得しているんでしょうか?

DPS
2010年1月25日6:08

>《不毛の大地/Wasteland》
不毛の大地を使っても相手が使わないと全く同じ行動が取れる場合はテンポを獲得したことにはなりません。(土地が10枚並んでる場合など)
不毛な大地によって相手が4マナのスペルを使いたいところ3マナのスペルしか使えなかった場合はテンポを獲得したことになります。これは「見せかけのビート」の項目を参照してください。実際のゲームでは見せかけのビートの方が重要である場合が多いです。

>《渦まく知識/Brainstorm》
これは《渦まく知識/Brainstorm》を打つことだけではテンポを稼いだことにはなりません。しかし、余剰マナで打った《渦まく知識/Brainstorm》によって次のターンの行動はより良いものになる場合がほとんどですし、使えるカードが全くないところに引き込むことが出来るかもしれません。手札がゲーム終了までに完璧である場合はテンポを取ったことにはなりませんが(渦巻く知識に関係なく次のターンに即死コンボが決まる場合など)。ゲームが長期化してトップデッキ勝負になった場合では特に《渦まく知識/Brainstorm》の効果は明らかです。本来ビート獲得0で終わるはずのターンにスペルをプレイすることができます。(空ぶる可能性も勿論ありますが・・・)

bun
2010年1月25日14:17

>ななしさん

>《不毛の大地/Wasteland(TMP)》
確かに相手が0コストで場に出した土地をこちらも同じ条件で対処している訳ですからテンポを維持しているだけで獲得している訳では無さそうですが・・・。
うーん。ちょっと心にひっかかるところがあったので、以下の様に整理してみました。

まずスコット・ジョーンズ版の「テンポ」を要素毎に分解します。

①「対戦相手との相対的な消費マナの差」で説明される「テンポ」
②「ビート」の概念で説明される「テンポ」
③「ビート」の概念をさらに「パーマネントの数だけを対象にしたもの」と「数だけでは無く質(場に与えるインパクト)を問題にしたものに区別したもの。

結局、上記の①と②を混同して考えると《不毛の大地/Wasteland(TMP)》の挙動もそうですが《吹きさらしの荒野/Windswept Heath(ONS)》を《もみ消し/Stifle(SCG)》した場合はどうなるのか?と言う疑問を感じてしまいます。
もちろん《もみ消し/Stifle(SCG)》も「相手が得られるはずだった1マナ」を「こちらの消費した1マナ」で打ち消しているだけなので「対戦相手との相対的なマナコストの差」を考えた時に「そのターンのマナの点数ではどちらも損をしていない」状態なのは判ります。

僕が感じた違和感は《不毛の大地/Wasteland(TMP)》をめぐるやりとりが「ビート」の概念と遠く離れた所にあるように感じたからでした。
「場への影響」を対戦相手との相対的な消費マナの差で説明しようとするのが「テンポ」だとした時《不毛の大地/Wasteland(TMP)》の挙動を説明する事は出来ないと思います。
そこで②と③の「ビート」を考えた時に《不毛の大地/Wasteland(TMP)》はこの点に作用しているのでは無いかと思いました。
相手が本来プレイするはずだった「ビートの質」を下げる、もしくは「ビート」自体のプレイを阻害する事を通じて、テンポを・・・あ。これ維持しているだけですね///
もしくは「維持できる可能性を上げているだけ」と言うのが正しい解釈でしょうか。

>《渦まく知識/Brainstorm(ICE)》
「ビート」の単位を「スペルのプレイ回数」に置き換えると言う考えは面白いと思います。
ANT等のストーム系のコンボの挙動を説明できそうですし、例えば世の中に火力しか存在しない「フル・バーン対決」はそのものズバリ説明可能です。

bun
2010年1月25日14:53

>DPSさん

>《不毛の大地/Wasteland》
「テンポ」と一言で言っても広義の意味があるのと同様に、スコット・ジョーンズ版の「テンポ」も複合的な要素があるのですね。
今回は要素毎に分解して考えた結果《不毛の大地/Wasteland(TMP)》の挙動を理解する事が出来ました。
結局「テンポ」が相手の挙動に影響を与えるかどうかは確率的にしか判らないと言う事になりますね。
あ・・・。でも僕の好きな「ハンドアドバンテージ」も何を引いてくるか判らないと言う点では一緒なのか・・・。
だからこそ環境への理解とプレイが重要なのかも知れませんね。

>《渦まく知識/Brainstorm》
「ビートの質」を高める、もしくは「ビート」そのものをプレイする為に余剰マナを使って手札を調整する事がテンポアドバンテージの獲得につながる訳ですね。
これも「対戦相手との相対的な消費マナの差」で説明される「テンポ」では納得しにくい点でした。

MOMIR Basicでは、一部の例外を除いて余剰のマナと言うものは存在しません。
生物の起動型能力をプレイしたければ、プレイする「ビートの質」を下げるしかありません。
この事はただ単にドロースペルをプレイする事だけではテンポの維持/獲得にはつながらないと言う点を理解させてくれました。

逆にMOMIR Basicの世界に《連絡/Tidings(10E)》を追加して、無限マナ環境を想定すると、ドロースペル =「ハンドアドバンテージ」がビートに与える影響を見る事が出来ます。
当然《連絡/Tidings(10E)》をプレイしたプレイヤーがテンポ面でも優位になります。
極端な例ですが、これが余剰マナを利用する事で「テンポアドバンテージ」を得られる事を説明できそうです。

さらに全くマナが存在せず、プレイヤーは1t毎にドローするか、ドローしない代わり生物をプレイする事を選ぶと言う環境を想定してもドロースペルが「テンポ」に与える影響を説明出来ますね。

こうして見ると余剰マナと言う考えは、意外に曲者ですね。
bun

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